映画『ひゃくえむ』ネタバレ感想

【映画『ひゃくえむ』あらすじ】
たった10秒に人生をかけた者たちの物語。主人公であるトガシは圧倒的な才能を武器に100m全国1位に君臨する小学生。そんなトガシが出会ったのは、ただ無我夢中に走り続ける引っ込み思案な少年小宮。現実から逃げ続けたいと願う小宮に対し、見かねたトガシは小宮に走り方を教えることに。鈍足だった小宮は、トガシと走り続ける中で、その凶器の才を徐々に開花させていった。届かない現実と背中を追い求め、生涯を10秒に捧げた2人がゴールの先に見たものとは……。大人気漫画『チ。』作者魚豊先生が描いた、心燃える100m走の物語。
今回は映画『ひゃくえむ』のネタバレ有感想をお送りします。
映画を見終わって、映画館の前を爆走し100mも持たずに息切れを起こした私。過去運動に身を捧げていた自分を思い出すために走ってみたものの、その熱はどこかに隠されているようでした。
とにかく2025年度最高傑作のアニメ映画と言っても、過言ではないでしょう。
同時期にチェンソーマンレゼ編が公開されていますが、皆さんがどのような評価を下すのか楽しみです。
今の私は『ひゃくえむ』しか見ていないので、この新鮮な熱が冷めないうちにここに感想を記します。
【今回の記事の概要】
・映画ひゃくえむネタバレあり感想
・最高級の音響とアニメーション
・全ては己のために。財津に心打たれた私
・ラストどっちが勝ったのか?【考察】
感想①最高級の音響とアニメーション

まさに職人の技。
もうとにかく終始ドキドキしっぱなしの私。
雨音と重なるスタートのピストル音、電車に重なるピストル音、ぬるぬるの作画に、感情を乗せる背景。全てが完璧すぎて、文句のつけようがなかったと思いました。陸上らしい静寂との緩急も良いですね。
エンドロールを見てみると、実際に走った人が何人もいらっしゃいました。それを活用?(専門用語での言い方が分からない)することで実現できた、まさに現代アニメの結晶です。特に最後の10秒なんて、アツすぎて息ができない程でしたから。
というのは一旦置いておいて、筆者が演出の面で特に気に入ったのは、トガシと小宮の最初の競争シーンです。
河川敷、高架下での一騎打ち。電車のガタンゴトンという音に心拍が重なって、ピストルが線路を通過する音に変わる。小宮の不気味さも相まって、電車のガタンゴトンという音が、本当に心臓に悪かった。
あとは大人のトガシが号泣する場面。グロテスクなまでに顔をぐちゃぐちゃにするトガシの涙にやられてしまいました。
製作陣のみなさん、本当にありがとうございます。
感想②全ては己のために。財津に心打たれた私

不安は対処すべきではない。人生は常に失う可能性に満ちている。そこに命の醍醐味がある。恐怖は不快ではない。安全は愉快ではない。不安とは君自身が君を試す時の感情だ。栄光を前に対価を差し出さなきゃならない時、ちっぽけな細胞の寄せ集め1人。人生なんてくれてやれ【財津さんのお言葉より引用】
とにかく本作で凄かったのが、同じ10秒なのにそれぞれ信念が違うところ。全員カッコよくて、つい心を奪われてしまうような名言が溢れていました。
私が特に良かったと思ったシーンは2つ。
1つは上記に上げた財津さんの言葉。不安症で被害妄想癖のある私には特に刺さる言葉でした。
『不安とは君自身が君を試すときの感情だ……人生なんてくれてやれ』
特にこのフレーズをリアルタイムで反芻しておりました。
今ちょうどうじうじ悩んでいることがあったので、背中を刺されたような感覚でした。とてもいい言葉を貰えたと思っています。不安の先の栄光が欲しいなら、人生なんてくれてやる、です。今決めました。もっと人生前向きに挑戦して生きていくんだと、心の中に留めておきます。絶対!
2つ目は、海棠が『財津と小宮』に勝つシーンでしょう。海棠さん好きすぎるんですが。
万年2位、それでもなお走り続けられているのは、『現実は逃避できる』から。その時のトガシの心情、現実逃避のために100mを始めた小宮の心情を踏まえ、改めてトガシに突きつけることとなったこの言葉。逃避しても目をかっぴらいて逃げる。何度だって立ち上がる執念が存分に詰まった海棠さんらしい表現だったと思います。
繰り返される『財津と小宮』……そして『現実から逃避しようか』と2人の背中を追い抜くシーンは、本映画屈指の名シーンだったと思います。津田さんの演技も素晴らしいですし、異端審問されそう……というのは置いておいて、最高でした。
現実は逃避できる。これって何気に大事なことだと思うんです。
負けている事実、届かない背中、誰しもにある高い壁。それだけを見ているとくじけそうになるけれど、己に神経を研ぎ澄ませて現実を追い抜いてしまえばそれでいい。実は私は意外とこの考えの下生きてきたので、海棠さんの好感度が高いのかもしれません。
とにかく、海棠カッコいい!
感想③ラストどっちが勝ったのか?【考察】

・孤独に走ってきた財津⇒小宮・海棠と横に並んでくれる選手の出現
・万年2位だった海棠⇒『財津と小宮』に勝利
・記録を追い求めた小宮⇒記録更新……だけど2位
・‘‘背中‘‘に阻まれ続けたトガシ⇒現実・背中を追い抜く。過去の小宮との対比。1位
元々気持ちでトガシに勝った小宮(小学生時代)、加え小宮の成長度合いを鑑みて、物語上トガシが小宮に勝つことは十分に考えられます。順位を出さず、ただ純粋に何かのために走った二人の笑みで映画が終了するのは、なによりも己のために走った二人の最高の雄姿だったと思います(っていうか試合終了まであと10秒!ってヤバすぎ)
何かしらに悩んで闘ってきた4人の100m走者たちは、それぞれが違う悩みを持っていました。
小宮で言えば記録にこだわる虚しさを、財津であればだれも追いついてこない孤独を。すべてが解消されるようなレース結果を考えるなら、これが最善なのかなと思います。小宮も記録は更新したけど2位。全てを捧げ自分のために走ったトガシが1位を取るのなら、私的にはしっくりきます。
というカタルシスの中に2人で心震わせる走りができた幸福、かつて2人で歩んだ過去があって、結局そこに行きついた。みんながそれぞれ自分のために走って最高の結末を迎えたと言ってもいいのではないでしょうか。
……と私は考えました。順位を考察するのは野暮ですかね。
終わりに

【ひゃくえむまとめ】
〇最高級の音響とアニメーション
〇それぞれの名言は、私たちの人生に気づきをくれる
〇最後はすべてを捧げたトガシが1位になった【考察】
映画『ひゃくえむ』
文句のつけようがないと思います。いや、本当に。
随所にちりばめられた作り込みが素晴らしかったです。2回目ぜひとも見に行きたい。
今回はここまで。ありがとうございました。
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