【完結編】海が見える家~旅立ち~

第4作品目。海が見える家~旅立ち~ネタバレ感想です。
【海が見える家旅立ち あらすじ】
海が見える家旅立ちより引用
父が遺してくれた海が見える家が台風により被災後、追い打ちをかけるようにコロナが蔓延してしまう。思うように日常生活をとりもどせない文哉は、農業の師である幸吉がビワ畑で倒れていたあの日に思いを馳せる日々を送っていた。心配する和海のすすめもあり、文哉は旅に出ることにした。向かったのは、幸吉の親友、イノシシの罠猟の達人である市蔵の暮らす集落。山に入り自然薯を掘ったり、斧で薪を割ったり、自然に抱かれて過ごすうちに、文哉は求めていた自分なりの答えを見いだしていく。そして、新たな決意を胸に抱く! 25万部突破のベストセラーシリーズ、堂々完結。
旅行の帰りにふと見つけて手に取った「海が見える家シリーズ」これに出会ってから半年が経過しました。私は、田舎暮らしにぼんやりとした憧れを持っていましたから、あらすじを読んだら買うに決まっていました。
文哉に偶然舞い降りた田舎暮らしは、どんな着地を見せるのか。前回の「逆風」では、立て続けに不幸が起こり、幸吉さんの死で幕が下りました。「旅立ち」は、そんな不幸続きの最中から始まります。今回は2つのテーマに沿って感想を綴ろうと思います。総括もかねて、この作品の根幹である「田舎暮らしと幸せ」の部分を考えながら振り返りました。
【今回の記事の概要】
・海が見える家ネタバレ感想
・文哉が見つけた田舎暮らしと幸せ
・土地を持つこと。
文哉が見つけた田舎暮らしと幸せ

「旅立ち」では、幸吉さんに言われた「自分の土地を持て」という言葉に葛藤する文哉が描かれました。
海が見える家と幸吉さんの土地に関わる問題を通して、文哉は自分の居場所について考えるようになります。元々は偶然が重なって始まった田舎暮らし。そこで暮らすことを選択したのは文哉君自身ですが、仕事を辞めたタイミングだったこともあり、文哉にとっては都合がよかったのです。自分の幸せを自分で決めていたと思っていた文哉ですが、そこに多くの人の意志が介在していることに気づきます。
私は、「逆風」の感想で「凝り固まった文哉の考えが懐疑的だ」と書きました。資本主義的考えを放棄して現状の田舎暮らしに甘んじる文哉に、私は悪い印象を持っていました。文哉と都倉の会話で感じたこの違和感は、幸吉の死を経て表立った問題となります。
南房総に引っ越してきたことで変わった価値観。それすらも違うんじゃないかと。文哉は答えを求めて市蔵さんを訪ねました。
都会暮らし(都倉・美晴)←南房総→さらなる田舎暮らし(市蔵)
「逆風」での都倉との会話で、自分の生活が正しいのだと信じて疑わなかった文哉が、この構図に揺れているのです。ここで迷わずに行動に移せるのが文哉の尊敬できるところですね。美晴ちゃんよりも、市蔵さんとの経験を取った文哉には、思わず笑みがこぼれてしまいました。私も同じ状況なら後者を選択していると思いますが。
幸せと向き合って実際に行動する姿勢は、見習わないといけないと思いました。私も、自分にとっての幸せと居場所を考えて生きているつもりでしたが、行動に移しているかと言われれば…。頭の中で想像するのと、実際に体験をするのは違いますからね。自分の思考の海を泳ぐだけでは、自分が知っている事柄しか見つかりませんから。
新しい価値観は、常に行動の先にある。それが今回学んだことの1つでした。
「田舎だと思っていた場所が田舎じゃなかった」
「自分の力で生きていると思ったら、そうじゃなかった」
それが「自分の土地を見つける」につながるわけです。常に思考をアップデートして疑い続ける。それも田舎暮らしに必要な要素なのでしょう。狭いコミュニティになりますから、常に変革していくことが「幸せな田舎暮らし」につながるのだと思います。田舎に甘えるだけでは「逃げの田舎暮らし」
自分が選んだ土地で生きることを決めた文哉は、「幸せな田舎暮らしを掴んだ」と胸を張って言っていいでしょう。流石は主人公!私も将来的には田舎で暮らしたいと思いつつ……まだ自分の中に蟠りを抱えています。「田舎暮らしが本当の幸せなのか」ずっと自問自答していましたが、一回思い切って移住して見るのもありかもしれません。一度田舎に生きてみれば答えがあると確信しました。
自分の土地を持つこと

「自分の土地を持つこと」
実は、私もこの考えの下に生きていました。自分の居場所って自分の力で見つけるものだと思っています。スタートラインにも立たずに、自分の常識を疑わない人が多い気が多いのではないかと。
上京or地元で暮らす。
この2者択一だと思っている人が多い。何となく東京で暮らしたいと思う人、何となくこのまま地元でいっかと暮らす人。確固たる意志と理由があればそれでいいと思ますが、特に地元って親の地元ですからね。自分の地元って自分で選択する権利があると思うんです。
何も疑わないで地元に居座ることは、私は悪だと思っています。他の場所と比較した上でそう決めたのか。比較した上で地元で暮らすと決めたのであれば、それほど幸せなことはないと思いますが。
私は「自分の故郷」を探すことを人生の目的の一つとしています。どこに行っても自分の故郷にできる場所かどうかを見定めるようにしています。土地というのも一期一会ですからね。観光地だろうと田舎だろうと、都会だろうと、自分が住む基準を考えながら歩くようにしていました。だから、今回の文哉の話は凄く刺さりました。そして、土地が欲しいと思いました笑。
終わりに

海が見える家~旅立ち~
これまでの4作品を見て「幸せ」とは何かを考えていました。
幸せとは自分の居場所があることだと思いました。幸せは疑い続けることで手に入るもの。何枚も自分のベールをはがし続け、終わりのない旅に出ること。それがが幸せを見つける唯一の手段なのではないでしょうか。
幸せって、考えれば考えるだけ遠くに逃げる難しい概念です。永遠に続く鬼ごっこのようなもの。我々日本人は、せっかく幸福追求権が保障されていますから、私も、今後の人生で存分に行使していこうと思います。とりあえず一回、果てしなく続く田園風景に紛れて生活しようと思います。今回はここまで。ありがとうございました。
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