君はポラリス(著:三浦しおん)

【君はポラリスあらすじ】
ーーひとは生まれながらにして、恋を恋だと知っている。
数ある星の中から見つけ出した輝きは、あなただけの、たった一つのポラリスなのかもしれない。どんな障壁も乗り越えてしまう不思議な感情に、あなたも恋と名付けるだろう。三浦しをん先生が描く恋物語短編集。
今回は三浦しをん先生作:君はポラリスのネタバレ感想です。
ずっとずっと読んでみたかった作品。名著であるとは聞いていましたので、期待値大で読みました。
読了後に頭を巡るのは、自らの過去。
『ーー僕はどうしてあれを恋だと知っていたんだろうか』
あの頃抱いた温かい感情に、もう一度向き合う日が来るとは思いませんでした。
今こうして感想を書いているわけですが、読んだその人次の日は恋について考えすぎて頭がパンクしてしまいました。そのため書こうと思っていた感想に手が付けられず、冷静になれた2日後になって書いているわけです。
誰もが知っているようで知らない恋の起源を探しに参りましょう。
果たして見つかったのでしょうか。
【今回の記事の概要】
・君はポラリスネタバレ感想
・恋は理屈で成り立たない
・どんな恋も美しい
・総合点数
・その他書評の紹介
恋は理屈で成り立たない

ーー恋は理屈の先にある
どれだけ考えてもぴったりな言葉が見つからない。きっと一生かけても見つからないのだろうと、半場諦めた状態で書いております。
見つからないのではなく、元々備わっていないのでしょう。
多くの方が『恋を恋と知っているのはどうしてか』という問いを頭に浮かべながら読んでいたと思います。もちろん私もその一人。
この問いに囚われたということは、本作に魅了されたということ。
同性でも、兄弟でも、異性でも、恋の形はバラバラなのに、皆同じ想いを胸に抱えている。いくつもの短編を読み解いていく過程に、このような強いメッセージが込められていたことは確かでしょう。
根源を突き詰めていくほど答えが遠のいていく。どうして恋をする相手を選べないのかと、各短編の主人公達に自らを重ねて考えておりました。特に最初と最後を飾った寺島君の想いには心を痛めました。
ーーそれは心の中で、ひそかに、囁くように、つづられていくだけなんだ【p.25より引用】
最初と最後を同じ人にするなんて粋な演出ですね。
僕は言わばノーマルなので、気持ちが分からない。なのに、同じ気持ちを知っている不思議。相手にも自分にも遠慮して自分の首を絞めつけてしまう様は、僕も痛い程分かります。
自分に戸惑って答えを探しても見つからない。
この苦しさも恋だとするのなら、理屈で説明してほしい。そう願っても叶うことは無く、ただ『恋』だと光り続けている。手を伸ばしても届かない北極星のように。
世の中の全てに理屈を求めるのは無理な話で、どうしてもバグのような不具合が発生してしまう。世の中のシステムを保つためにも『恋』が必要だった。説明できなくても肯定できてしまう残酷な感情を、神様は私たちにお与えになったのかもしれません。
自分の経験と照らし合わせて見ても、『恋』は説明できないほど熱く燃えていました。自分でもどうして好きになったのか、何がきっかけだったのか、どこが好きなのかさえも説明できなくて、胸の高鳴りだけが抑えられない。本作を呼んで振り返ると、あの感情が紛れもない『恋』だったのだなと思いました。
理屈で説明できてしまったら、きっとそれは『恋』じゃない何か。
人の手に負えない感情が血も性別も乗り越えていく様を見せつけられてしまったら、知りたくなるじゃありませんか。
『どうして恋を恋だと知っているのか』
こんなに単純で複雑な質問に、解がなくても挑みたくなってしまったある夏の夜なのでした。
どんな恋も美しいと思う

結ばれる恋も、結ばれない恋でも、同性愛も近親愛でも、人を想う気持ちは美しい
昨今では人を想う気持ちを明文化することで、同性愛など少数の愛の形を正当な権利として認め合う流れがありますが、それこそが差別を助長している気がしてなりません。
ノーマルな人間は変わった愛を穿った目で見てしまうけども、誰かの一人称で語られた愛は、全て等しく美しい。みんな同じ気持ちを知っているし抱えている。それだけでよくない? と思った次第です。
むしろ、秘め事は恋に磨きをかけ美しさを増大させる最高のスパイス。僕も昔二人だけの秘密を共有し合ったあの高揚を忘れることができません。あの秘密の共有が恋を恋たらしめる麻薬だったのかなと思いました。
特に顕著なのが、『私たちがしたこと』に登場する朋代と俊介の二人。
人を殺した秘密を共有してしまったことで、どれだけ離れようとも離れられない心の距離。
腐敗しとろけてゆく、永遠に暴かれることのない秘密を、沈黙と忘却をもって苗床の栄養に変えよう【p.108より引用】
二人は表面上関係を終わらせたのかもしれないですが、心のどこかに互いのためだけの部屋は残ってしまうでしょう。僕はこの文章がとても美しいなと思いました。
仮に共有することがなくて、自分だけの秘め事であったとしても同様です。それは言わずもがな最初の最後の寺島君が証明しています。
個人的には、叶わない片思いに身を委ねる行為の方が好き。相手に理解されなくても全てを捧げているということだから。
終わりに

【君はポラリスまとめ】
・人は恋を恋だと知っている。
・恋は理屈で説明できないもの。
・どんな愛の形でも等しく美しい。
君はポラリス
一番大事な‘‘問い‘‘に答えがない以上、感想を言葉にするのが難しかったです。
三浦先生は、読者に一生かけても解けない問いを与えてしまった。それは何とも罪な行為であろうかと(笑)
もはや読まなければよかったと思ってしまうぐらい、素晴らしい物語集でした。
今回はここまで。ありがとうございました。
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