【小説】おおかみこどもの雨と雪ネタバレ感想~小説感想メモ㉔~

ー読書感想文ー

【心温まる家族の物語】おおかみこどもの雨と雪

おおかみこどもの雨と雪
おおかみこどもの雨と雪

【小説】おおかみこどもの雨と雪
と・国立大学に通う主人公‘‘花‘‘は『おおかみおとこ』と恋に落ちる。身寄りのない二人だったが、雪と雨という子どもを授かり、小さなアパートで幸せに暮らしていた。しかし、順風満帆な生活の最中で、父である『おおかみおとこ』は雨が生まれた翌日この世を去ってしまう。『おおかみこども』として生まれた雪と雨、そのイレギュラーな存在懸命に向き合う花、そんな家族3人それぞれが最終的に選んだ‘‘道‘‘はいかにーー
細田監督が送る‘‘家族愛‘‘の物語。

今回の質問者
今回の質問者

2012年公開の映画原作だから、もう12年も前の作品だ。見たことない人も多いんじゃない?

筆者
筆者

金ローではよく再放送されていますが、小学生だと危ういですね……。

細田守監督の映画が原作の小説です。細田監督と言えば『サマーウォーズ』が有名ですが、筆者が一番好きなのは『おおかみこどもの雨と雪』なのです。

筆者が中学生の頃、そう、まだオタクでもなんでもない頃から大好きだった作品でした。

その気持ちは今も変わらず日々を過ごしているわけですが、ふと『どうしてこの作品はこんなにも筆者の心を打ったのだろうか?』と考えました。

頭上に浮かぶ雲みたいに、ふんわりして曖昧な‘‘好き‘‘と言う感情。

最近ブログを綴り始めた筆者が『そんな曖昧な恋心を放っておけるわけがない!』ということで、時をかけて感想を書こうと決めました。もちろん小説を再読して。

前述しましたが、今回は『どこか筆者の心を打ったのか?』ここにフォーカスしています。

読書感動文でも何でも、参考にして頂けたら幸いです。


北条なすの

二次元が住処のガチ体育会上がりオタク。仕事しながらアニメ聖地の現地情報や小説の感想を綴っています。【実績:ゆるキャン△聖地(静岡西部)完全制覇・マケイン聖地完全制覇等】他にも貧乏旅行スキル、城郭、登山、温泉の記事を更新中。

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【今回の記事の要点】
・『おおかみこどもの雨と雪』ネタバレ感想
 ・‘‘花‘‘から見える母親像
 ・目を背けたくなるほどの愛


‘‘花‘‘から見える母親像

一番は‘‘花‘‘が体現した母親の姿。懸命に生きる姿が何より人の心を打ったのだと思います。

子どもを産むだけ産んで無責任に虐待へ走る親も多い時代です。

生きづらい世の中ではありますが、そんな社会問題を真っ向から否定する花の姿。冒頭では、読者の握りこぶしが何個あっても足りない苦労が描かれています。

こどもたちが病気してしまっても病院に頼れない。元々身寄りのない花は親族にも頼れない。小さなアパート暮らしで貯金は減る一方。オオカミの本能で遠吠えしてしまい苦情に悩まされる日々。

地獄と言っても過言ではない暮らしでしょうね。

それでも二人を愛することを辞めなかった。

懸命に生きる道を模索して二人のために全てを捧げる姿は、我々が母親から生まれる生き物である以上否定することは許されないのです。

今作における批判として『花が‘‘きれい‘‘すぎる』とよく言われている印象ですが、理想だからこそ物語として成立しているし、オオカミとの間に愛が生まれます。

親である以上、この理想を目指すべきだと筆者は思うのですが、皆さんはどう思いますか? 

現代では女性の社会進出も盛んになっていますが、女性だろうと男性だろうと子供を授かった以上は皆‘‘花‘‘であってほしい。

当時中学生だったからこそ、子どもの理想とする母親像でもあったわけです。

愛を注がれるというのは悪い気はしませんからね。

人は常に空っぽの容器を携えているからこそ、毎日を懸命に生きるもの。

筆者が親に愛されていなかったというわけではないですが、当時はブラック部活に所属し罵声を浴びせられる毎日を送っていたので、本作を見るたびに心が満たされていたのだと思います。

誰の心にもすっぽりと収まる愛なんてものは、親からの無償の愛以外にあるでしょうか。

友達と育む愛も、恋人と育む愛も100%満たされることなんて無理に等しい。

これは筆者が生きてきた中で感じていることですが、同じように心をすり減らしていた、もしくは今すり減らしている人の心を満たしてくれる作品だと思いました。

今回の質問者
今回の質問者

出来損ないでも愛してくれる親に感謝。

筆者
筆者

本当に、そうですね。

そして『おおかみおとこ』の故郷へ。親離れパートです。

とにかく本作の真骨頂は、この‘‘親離れ‘‘。とにかく繊細で美しく、誇張なしに唯一無二の仕上がりと言えます。

親離れという題材は頻繁に取り上げられる内容ではありますが、『ニホンオオカミ』という絶滅した動物を触媒とすることで、‘‘親離れ‘‘との化学変化を起こしています。

人としてはまだ未熟なのに、『ニホンオオカミ』として成熟してしまう雨。

人として生きることを選択しようとしている雪。特に弟の雨が先に成熟してしまうという物語構造が突然の親離れを強調し、読者の感情を強く揺れ動かします。

これがおおかみこどもが二人である大きな強みと言えるでしょう。

そして『親の12年間と子どもの12年間は違う』という単純な時間の流れの差異を的確に表現できています。

よく、人生の体感だと20歳で折り返し地点を迎えてしまうとも言いますし、花にとっては刹那に過ぎ去った12年間。

人対人だと、どうしてもありきたりな突然の別れとなってしまいますが、今作の子どもは『おおかみこども』。

確かな意味と動機を持って突然かつ永遠の別れとなっているのが本当に美しいと感じました。

きっと花にとっては本当にあっという間だったんだなぁと思いますよね。

冒頭でさんざん苦労している花の姿を見ていますから、引っ越ししてもずっと勉強していましたし。

花の気持ちを考えるといたたまれなくなりますが、二人ともいなくなる喪失感と、積み重なった晴れやかな田舎の情景が溶け合って、頭に描いた世界が無限に広がって行くような感覚になりました。

困難を乗り越えた花だからこそ、愛が別れを彩る。

そして最終的に子どもを見送った花は、母親ではなく花として彼を想う。

変わらない愛がいつまでもそこにあったから。

おおかみこどもと過ごした非日常から帰ってきた花は、物語の原点にまた戻るのです。


目を背けたくなるほどの愛

愛

今思うと筆者が‘‘愛‘‘を知ったのは、本作がきっかけだったかもしれません。

凄く大まかなに言うと、本作は、花がどこまで『おおかみおとこ』への愛を貫けるかの試練と言えます。

言ってしまえば人生も縛られて苦しんで、旗から見れば『おおかみこども』は重荷となってしまっているわけです。

何があろうとも花が手放さなかった家族への愛。

これが私の心に響き渡り、今に至るのでしょう。

もちろん今の筆者は純愛至上主義。片思いは、長れば長い程美しいとさえ思います。

そして二人の『おおかみこども』を背負い無事に送り出した花は試練を乗り越えるのです。

小説の話で言いますと、最後は空っぽの家が描写され、『おおかみおとこ』の運転免許証の側で思い出の焼き鳥を食べながら物語が終了します。

子供を失うというとんでもない喪失感なのに、そこに残る愛が読者の心をどこまでも満たしてくれる。

何とも不思議な感覚です。親離れの物語なのに、悲観的な要素がみじんも残らない構成。

『おおかみおとこ』への愛が導いた物語は、家族愛を描いた物語と言うよりも、1人の夫への愛を貫く純愛物語と捉えてもいいかもしれません。


終わりに

おおかみこどもの雨と雪
おおかみこどもの雨と雪

おおかみこどもの雨と雪4.2

【今回の記事の要点】
・『おおかみこどもの雨と雪』ネタバレ感想
 ・‘‘花‘‘から見える母親像
→子どもに人生を捧げる花の姿は、理想とする母親像。花が捧げた無償の愛は、読者の心を癒す母親の愛。
 ・目を背けたくなるほどの愛
→試練を乗り越えた恋愛物語の側面。一人の男に捧げた愛は親離れの喪失感と共鳴し、読者の心を満たす。

常に人の隙間に寄り添う物語だなと思いました。

確かにきれいで思想的で、脆い物語かもしれません。ですが荒んだ現代社会を生きる我々には絶対に必要な要素でしょう。

まだ読んだことがない人は、ぜひ読んでみてください。

今回はここまで。ありがとうございました。

【関連:こっちも母親目線の物語

【一途な純愛物語】

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