【純愛】潮騒(著:三島由紀夫)ネタバレ感想~小説感想メモ⑱~

ー読書感想文ー

潮騒(著:三島由紀夫)

潮騒(著:三島由紀夫)
潮騒(著:三島由紀夫)

今回は潮騒(著:三島由紀夫)のネタバレ感想です。

渥美半島と伊勢志摩の間にある神島を舞台とする、恋愛物語となっています。恋愛、いや純愛物語と評するのが正しいでしょう。

【潮騒:あらすじ】
古代の伝説が息づく伊勢湾の小島で、たくましく日焼けした海の若者新治は、目元の涼しげな少女初江に出会う。にわかに騒ぎ出しす新治の心。星明りの浜。匂う潮の香、触れ合う唇。嵐の日、島の廃墟で二人っきりになるのだが、みずみずしい肉体と恋の行方はーー。困難も不安も、眩しい太陽と海のきらめきに溶け込ませ、恩寵的場世界を絵ばいた三島文学の澄明な化粧。ー潮騒:あらすじより引用ー

恋愛物語としては、非常にシンプルな構造を持つ今作。隔離された島を舞台としている部分の良さが詰まった神作であり、何度も映画化されるのも納得の物語だと思いました。恋のライバルがいて、ヒロイン、主人公に片思いする女の子もいる。主人公の実直な性格も素晴らしい。個人的にはアニメ化したら面白いんじゃないかと思いますけども。山田監督辺りに映画化してもらったらかなり反響があるんじゃないかと思っていますが、今回はそんな潮騒のネタバレ感想をお送りします。


北条なすの

二次元が住処のガチ体育会上がりオタク。仕事しながらアニメ聖地の現地情報や小説の感想を綴っています。【実績:ゆるキャン△聖地(静岡西部)完全制覇・マケイン聖地完全制覇等】他にも貧乏旅行スキル、城郭、登山、温泉の記事を更新中。

北条なすのをフォローする

【この記事の焦点】
・潮騒ネタバレ感想
・良かった点
・総合評価


【ネタバレ感想】閉鎖的島を彩る情景描写

イメージ

私が今回素晴らしいなと思ったのは、相変わらずの情景描写です。隔離された島に暮らす主人公の内情とリンクする情景が、心に染み込んでくる作品でした。

島に生まれ、島で暮らす主人公。心の内に秘める外の世界への憧れという部分が、今作のキーになる心情です。もちろん地の文として外の世界への憧れが直接書かれることもあるのですが、この‘‘外への憧れ‘‘という部分の大半は、主人公が海を眺める構図に詰まっています。

伊良湖水道、鳥羽、伊良湖の灯台、周りを通る船を見るという行為が頻繁に描かれることで、情景の美しさと一緒に外への憧れが募る新治の心が染み出してきます。並行して、弟は修学旅行に出かけるという新治との対比があったことで、外の世界に憧れる新治が強調されていました。そんな新治にとって外の世界への憧れが恋に変わり、初江に向けられ禁断の恋に発展します。

いたってシンプルな構造の物語ですが、神島から見える景色は、繊細に三島由紀夫らしい描写の中で生き生きとしているようでした。実際に二度も神島に出向いているからこそ、ここまで詳細に描かれていのだなと手に取るように分かる作品です。

外の世界を見て何を想うのか、三島が実際に見た景色に直接語らずとも生まれる憧れは、この物語の一番の良さだっと思います。言い換えれば、神島の魅力が存分に詰め込まれた作品であるとも言えます。実際に聖地巡礼してみたくなる作品だったのではないでしょうか?


【ネタバレ感想】外の世界を知り、恋を知り

知ること

比較的短めの物語の中に描かれる新治の成長。恋を知って、外の世界を知る。自分が外に憧れているのだと自覚して、一級航海士になる決意をする。遠方での漁の経験が確かに自分を強くしたと、最終的には、そこにフォーカスが当たる形で物語が終わりました。

『彼はあの冒険を切り抜けたのが自分の力であることを知っていた』

ー潮騒より引用ー

引っ込み思案だった新治の成長という部分も、この物語では外せないポイントです。純愛物語ではあるのですが、恋を知った先に新治が見た景色、それは新治が自分自身の力で見つけ出した外の世界だったのです。

恋で揺れ動く心が「潮騒」と表現されているよりは、開放を望む新治の心の叫びが「潮騒」ではないかと思いました。

そのまま、現代人にも通ずる葛藤でもあります。何か囚われがちな現代人。当時の時代よりも簡単に‘‘自分の外の世界‘‘を知れるようになってしまったからこそ、「潮騒」という作品は、より一層輝きを放つ作品になってるなと思います。不朽の名作と言ってもいいでしょう。

引っ込み思案な新治の成長、未来へ歩み出す彼の軌跡を噛みしめて、私も一歩を踏み出せる人生でありたいと思いました。


終わりに

潮騒(著:三島由紀夫)
潮騒(著:三島由紀夫)

潮騒3.8

新治と三島の目に映る、神島と初江の魅力。恋を通して外の世界を知る物語の構図は、現代人にも通ずる世界です。この作品は非常にシンプルな構造を持っているので、普段本を読まない人にお勧めできる作品だなと思いました。三島由紀夫さんの作品は、何かと一ひねりある終わり方が多い印象を持っていたので、シンプルだからこそ心に刺さる描写が多かった気がします。

今回はここまで。ありがとうございました。

【関連:その他の小説感想】

コメント