【音楽×青春】きみの色

映画きみの色のネタバレ感想レビューです。
昨今のバンドアニメの流行。
けいおんに始まり、ぼっち・ざ・ろっく、ガールズバンドクライ等々。
今回は数々の名作を世に送り出した山田監督による「音楽×青春」作品ということで、期待はかなり大きめに見に行きました。元々予告を見ている限りは、つまらないわけない題材だなぁと思っていましたが、独特で繊細な色彩美を求めて初日凸。
初めに言っておきます。私の読解力では、1回で全てを理解するのは難しかったです。
それでも一言で表現するなら、若者への応援歌だと、私は思いました。

繊細で優しい物語(表面上)
はやく2回目を見たいなとうずうずしている私ですが、今日は台風が来ているのでまた今度。
今回は、ネタバレありで映画で感じた気持ちと良かった点を記します。
【この記事の焦点】
・きみの色のネタバレ感想
・良かった点
・山田監督が表現した世界を考える
【神ポイント】圧巻のライブシーン

とにかく驚かされたのはライブシーンの完成度です。
表現していることがうまく呑み込めなくても、これだけで見に行く価値がありました。

ヤバイっす……
文化祭?(バレンタイン)で、最初で最後のライブシーンがクライマックスで描かれます。3曲フル尺で描かれたライブシーンは、今年の中でも圧倒的な臨場感とライブ感。
あまり他作品と比較したくはないですが、ぼざろの映画よりも心揺さぶられるライブシーンです。3人の各々の感情をひとまとめにするのではなく、それぞれの感情を3曲に分けて乗せる。「色は波のようなもの」と言うのが直に伝わってくるようなシーンでした。
音響がとにかくピカイチ。繊細でお淑やかに進行していく物語でしたが、クライマックスのジェットコースターのような旧勾配で心臓を掴まれます。圧があるBPMに心臓がテンポを合わせ、見る見るうちに体が高揚感に包まれました。
同じ長崎県佐世保、坂道のアポロンを思い出しました。ぬめぬめ動く観客にも、何だかリスペクトがあったような気がします。本当に瞬きできないぐらい圧倒的な映像美。
これは本当に映画で見ないと損だと思いました。
ただ、音の圧が強すぎて、歌詞がよく聞き取れない状況ではあったのです。私はそこに思考が追いつなかったものの、苦言を呈している人が一定数いらっしゃいました。
視聴後、これについて改めて考えてみると、私はあえてかと思いました。
「きみの色」と言う作品は、言葉を極限まで少なくしているような気がするんですね。そういう描写は映画の節々に見ることが出来ます。山田監督が話していたインタビューも見てみたのですが、この作品は「名前がつく前の感情を色と音で表現する」と言うのをコンセプトに始まったそうなのです。
もしかしたら、あえて言葉をかき消してたんじゃないだろうかと思いました。楽器=音に気持ちが籠って、高ぶり、高揚しているのを、音響を強くして表現している。あえて歌詞を聞き取りずらく表現しているのかなと思いました。考えすぎかもですが
未完成の若者の感情を一気に爆発させるギミックの一つではないかなと……。ライブ中にも、もう一段!! とギアを上げるシーンがありますし。
未完成の感情というのが美しい芸術なのは、私も同意見です。いつまでも持っていられることが出来ないからこそのきらめき。それを色と音に乗せる。このコンセプトに最高にマッチしたライブシーンだったと思います。
本当に落差に持ってかれるんです。彼ら3人の感情に。
本当に100点、いや120点のライブだったと思います。
【ネタバレ有】主人公の立ち位置と若者へのエール

私が面白いなと思ったのは、主人公トツ子の立ち位置。
色が見える彼女を通してみる2人が主人公なんじゃないかと思うぐらいでした。私たちがと トツ子の目を借りて2人(きみちゃんとルイくん)が葛藤する青春物語を見ているような、不思議な感覚です。
な~んとなく、主人公が蚊帳の外の描写が多いんですよね。主人公に感情移入というより、2人に感情移入できる作品に仕立て上げられている気がしました。
自分に正直になれない2人。学校を辞めてしまった不安と祖母に嘘をついている不甲斐なさを抱えるきみちゃん。医者を継がないといけない立場である、ルイくんの音楽への葛藤。
悩み、立ち止まり、後ずさり。それでも全部受け入れて前に進む。
若者を応援するような作品だなと私は思いました。
聖書を引用した表現が多く、心に残った言葉も映画館に置いて来てしまいました泣。なかなか詳細に語ることが出来ませんが、節々に悩む若者の葛藤を救いあげる言葉がちりばめられていました。
そこに大人の立場である日吉子先生の導きと葛藤が加えられて、美しい物語に仕立て上げられていました。ベッドに彫られたバンド名の伏線回収も素晴らしかった。先生もトツ子たちを救い、先生逆に救われて迷いを断ち切ることが出来る。いい構成です。大人になってしまった私たちだからこそ、先生にも感情移入が出来ました。
ただ、ストーリーを端折りすぎ。深堀りが出来ていないという声もありました。
確かに一気に進む場面もありました。一カットに悩みや葛藤、現状の感情の整理、背景を落としてくることが多かったです。そこに物足りなさを感じる人も多かったかもしれませんね。
ですが、私には言葉にしない心地よさがありました。
きみの色には、これで十分だなと私は思いましたね。言葉にしなくても伝わることがあるし、言葉にできるほど、感情が育っていないんです。私も自分が高校生の頃を思い出しながら、口下手な自分に重ねていました。隠し事や嘘にもスポットが当たる作品なので、この一カットこそが、山田監督の温情なのではないかと……。特に直接的にスポットが当たらない「恋愛」の面においては。
若者らしい悩みや葛藤。その裏にある黒い部分が、色が見えるトツ子を通すことで、物語として紡がれる。私には、きみちゃんとルイ君と言う観察対象(主人公を)トツ子の目を借りてみる作品。若者の葛藤も友情も全て詰まった青春アニメに思えました。
【ネタバレ有】色恋も友情も全部青春

ちょっとダークな、その側面を少し見せることで物語にハリが生まれる。
ここは映画に習って直接的ではなく、ふんわりと書こうと思います。
要は2人(女性側)は一目惚れに近いじゃないですか。
ここを直接的に表現せず、友情に焦点を当てるのは素晴らしいですね。だからと言って恋愛面も蔑ろにしない。きみちゃんの想いも定期的に描かれ、ラストはトツ子……。
とにかく……自分で抱え込んで答えを出すことも若者の責務な気がします。私もそうだったな、なんて。色が見えるトツ子視点だから、色の些細な変化で、恋愛をとらえることが出来る。正直、恋愛面は世界観から離れてしまう側面ですが、描かないことは嘘になる。
うまい調節だと、私は思いました。お転婆で不思議ちゃんのトツ子が主人公だから成せた技です。ダブルミーニングのタイトルの回収にもなった気がしますね。
まぁ、全部青春や
「きみの色」総括

きみの色
総じて素晴らしい映画だと思いました。
若者の感情を上手く色と音に落とし込んだ作品だったと思います。ですが、全てが1回で理解できたと思っていないので、もう1回ぐらいは見に行く必要があるかも。トツ子を通した感情の波に揺られて、自分の青春を思い出してみてください。今若者であるならば、前に歩き出せい!! こういうバンド系もアリ。
今回はここまで。ありがとうございました。
(きみちゃんの太ももに魅入られていたのは内緒にしてください)
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