花咲くいろは『いつか咲く場所』上下巻

【花咲くいろは~いつか咲く場所~】
10年の時を経て続編が登場! 緒花たちが喜翠荘を去ってから7年後、つまりアニメのその後を描いた物語。『四万十スイになりたい』ーーそう決めて我武者羅にホテル修行を積んできた緒花が‘‘とあること‘‘をきっかけに喜翠荘に舞い戻る。湯乃鷺にはすっかり荒廃した喜翠荘、そして成長した仲間たちがいた。そして緒花は喜翠荘再興に向け動き出す!!
現実と夢、折り合いを付けながら前に進むそれぞれの物語。
今回は『花咲くいろは』アニメのその後を描いた小説『いつか咲く場所上下巻』をネタバレなしで語ります。
普段はネタバレ全開で小説の感想を書いている私ですが、今回は特別。
皆さんに読んで欲しい=湯涌温泉にお金を落として欲しいのでネタバレなしで見どころを解説します。

というか、あのアニメ続編あったのか!!……の割には話題になっていないよね?

販売はかなり限定されていますからね
発売当初は各書店にて(それでも限定的だけど)で販売されていましたが、現在は湯涌温泉(聖地)で買うか通販になるのではないでしょうか?
筆者が購入したのも、東京都立川市で開催された『花咲くいろはのコラボブース』でしたので、アニメのその後を知っている方はそう多くないでしょう。
それに上下巻揃えると4000円しますし……

でも値段で敬遠して欲しくない!!
初めに言っておくと……
この続編メチャクチャ面白いです。
ほんと、ほんと。
ただ原作ファンを喜ばせるだけのファン小説じゃないんです。
花咲くいろはがアニメで登場してから10年です。
その10年で進化してきた地方創成論と、街の隆興と荒廃。
上手にリアリティを織り込んだ物語の中にも確かに緒花が生きている。
僕たちの知っている緒花が葛藤しながらも成長する姿、最後まで見届けてください。

4つの見どころに分けて話します。
【今回の記事の概要】
・花咲くいろは~いつか咲く場所~ネタバレなし感想
・アニメのその後『4つの見どころ』
~7年後の喜翠荘~
~それぞれの物語~
~緒花の成長と自立~
★超ビックゲスト★
見どころ①7年後の喜翠荘

【7年後の喜翠荘】
見る影もない喜翠荘。でもそれは湯乃鷺も一緒で、街には寂れた雰囲気が漂う。喜翠荘を取り巻く環境が非常にリアルに描かれている。そして緒花を通して変化していく新たな喜翠荘に注目!!
祖母であるスイが守ってきた喜翠荘は、定期的に手入れされながらも荒廃しています。
そして湯乃鷺も典型的な寂れた温泉街として描かれています。
この辺りのリアリティは、原作から10年過ぎたからこそ出せる味わいだと思いました。
・地元の信用金庫の抵当に入っている喜翠荘。
・借金を抱える四万十家族一行。
・温泉街全体の資金難で前に踏み出せない現状。
寂れていく地方が鮮明に描かれています。
喜翠荘の復活を誰も望んでいない。そんな気すら失せる現状に新しい風を吹かせたのが23歳になった松前緒花です。
特に『抵当に入っているから……』という状態に笑ってしまう(筆者も金融勤務のため)
ようは担保に入っているので喜翠荘は信金のもの(借金を返すまでは)
この辺の事情はアニメではなくニッチな小説だから描けるリアルです。
緒花はそんな『スイの喜翠荘』を取り戻すために躍動するのですが、果たして最後、喜翠荘はどんな変化を遂げるのか。
この点が、緒花の成長と物語の主題とリンクしていて素晴らしかった。
ぜひ喜翠荘の変化の過程に着目しながら読んでいただきたい。
ーー喜翠荘に咲く花は果たして何色なのか。
見どころ②それぞれの物語

【それぞれの物語】
花咲くいろは~いつか咲く場所~の主題は『それぞれに物語があること』
緒花とそれ以外のキャラとのすれ違う想いに注目!!
これはあくまで読んだ私が思ったこと。
全世界の人間と繋がれるようになった現代だから、強く心を打つテーマです。
・どこかのSNSで拡散されるタイムライン。
・情報の捏造が容易になったこと。嘘を嘘と見抜くのが困難になっている。
・大衆が息を巻き、多様性と謳いつつもマイノリティを排斥する現代社会。
どこかで脳死で人を批判していませんか?
私もそうです。フェミニストを見れば脳死で馬鹿にするし、ビーガンを見たら前の前で焼き肉をしたくなる。誰かが失敗していれば背景も知らずに笑っていることもある。
批判される人たちにも、そこに行きついた経緯が必ずあるはずです。
なのに表面的な情報だけで批判の的にしてしまう。その裏にある背景も知らずに。きっとその人にしか分からない事情があるはずなのに。
この物語を読んで、そういう自分を見つめなおすきっかけになりました。
『誰も本気で喜翠荘の復活を望んでない。約束したのに……』
ある種子どものままに夢を担いでやってきた緒花も戸惑います。
でも次第に気づいていくんです。
人は刻々と変化していくこと。それぞれに事情があって夢があること。歩んできた道が違えば同じ場所にはいられない。
それを踏まえて動き出した緒花は湯乃鷺にどんな物語を紡いだのか。
ーー緒花が作り上げた‘‘答え‘‘に着目してください。
見どころ③緒花の成長と自立

【緒花の成長と自立】
周囲の人に助けられながらも我武者羅に突き進む姿は7年前と変わらない。まだまだ子どもな緒花はスイという目標があるから進んできた。だけど、その夢にも次第に変化が生まれ、緒花は緒花なりの答えを模索し始める。
今回の話でキーになる人間は3人。
・ふくや旅館の娘:結名さん
・国民的女優:佐倉さん
・緒花の祖母:スイさん
3人は同じ思いで行動しています。
緒花はこの3人と関わることで次第に変わり始めるのです。
正直、緒花はいい意味でも悪い意味でもアニメ後から変わっていません。
『スイ』という親に囚われた子どもなのです。スイがいた頃の喜翠荘を復活させるのに躍起になっていました。
そこからの自立の過程に注目です。
この3人がどんな思いで行動しているのか、そして緒花にどんな刺激を与えているかを整理しながら読むと緒花の成長を捉えながら読み進めることができるでしょう。
喜翠荘復活にあがきながら、緒花は本当の意味で大人になっていく。
ぼんぼり祭りの最後、緒花がのぞみ札に書いた自身の夢はーー。
見どころ④★超ビックゲスト★

★ビッグゲスト★
ーー誰でしょうか。その答えは読んだ人にしか分からない。
後輩なのか、ある種の‘‘先輩‘‘なのか。
まぁ、確かにねって感じのビッグゲスト。
とにかく楽しみにしておいて!!
終わりに

【花いろ~いつか咲く場所~まとめ】
・喜翠荘と緒花の変化に注目。
・それぞれの視点を大切に読み進めるべし。
・緒花の成長と自立に注目
・ビックゲストは『元○○の○○』(ヒントは役職)
アニメのその後を描いた『花咲くいろは~いつか咲く場所~』でした。
おすすめ
ほんと、おすすめ。
PAWORKSが好きな人は絶対好きになりますから、筆者の言葉を信じていただけたらと思います。
筆者もいつか湯乃鷺に行きたいなぁ……
今回はここまで。ありがとうございました。
【関連記事:その他の小説感想】
コメント