あの花製作陣が送る、ふれる。ネタバレ感想

今回は映画:ふれる。のネタバレ感想になります。
今回の作品は、新たなる挑戦というのが正しいでしょうね。
『あの日見た花の名前を僕たちはまだ知らない』
↓
『心が叫びたがってるんだ』
↓
『空の青さを知る人よ』
と続いた思春期の子どもたちを描いた3部作。今回からは埼玉県秩父を離れて、大都会東京に舞台を移して物語が始まりました。脚本の岡田さんの思いがリーフレットに記載されていましたが、今作は『発展的な答え合わせ』の作品です。
大人になるということや、人と関わるということに対して考えさせられることが多かった作品だったと思います。

初めに言っておくと、2024年のアニメ映画の中でも上位の面白さでした。
今回はそんな、ふれる。のネタバレ感想をお送りします。
【この記事の焦点】
~ふれる。ネタバレ感想~
・『人』を知る(2題)
・神的ワンシーンについて
人は分からないから面白い

ふれる。を見て『人との関わり合い』を再考しました。きっと同じように考える機会を得た人は多いのではないでしょうか?
ふれる。という人と人とをつなぐ不思議な生き物を通して、心を通わせていた秋、諒、優太。子供の頃から隠し事一つなく親友として育った島育ちの3人です。彼らが大人になり、環境が変わったことで楽をしてきたツケが巡ってくるところから物語が動き出します。
3人の世界に樹里と奈南という2人が入ることで3人だけの関係性が終わりを告げます。この樹里と奈南との対比という部分は、物語を構築する上で外せない部分だと思います。全てを共有しなくも理解し合い、全て分かり合えないけど言葉にする樹里と奈南。3人の関係性の歪さを強調する構図が良かったと思います。
何がいいかってとにかくわかりやすい。主張と伝えたいことがはっきりしていてそこに真っ直ぐ進んでいく面白さがあります。腹の中を曝け出すことは難しい。だけど、そこをわかっていく面白さが人と関わる面白さなのだと、私は受け取りました。
私自身、本当に秋君みたいな人間なので、とにかく刺さる部分は多かったです。言葉にすると確定してしまうから動かないLINEのトーク画面を眺めるだけになるとことか、いろんな人を勘繰って疑心暗鬼になっちゃうところとか。口下手な人ほどこの作品に入り込めたのではないでしょうか?
少し話題は逸れますが、物語の面白さには主に2つがあると思っています。受け取る物語な探す物語。ラノベと純文学みたいな感じですね。今作、ふれる。のようにわかりやすい主題で答えを教えてくれる物語。こちらは起承転結がはっきりとしていて心の中のもやもやが解消する快感があります。対して探す物語。まさに純文学的面白さで、解を自分で探さないといけない。例えば現在公開中のきみの色なんかはこちらに分類されるものだと思っています。互いに良さはありますが、メッセージ性はふれる。に軍配があがった気がします。
閑話休題、人と分かり合えることの素晴らしさ、面白さをこの作品から感じ取れたのなら、十分に見る価値があった作品だと言えると思います。またこの部分は下の方で語りたいと思いますので一旦ここまでにしましょう。
では、簡単に分かり合えてしまう3人がどうなってしまうのか。そこをもう少し掘り下げたいと思います。
人とのすれ違いは成長を促す

ふれるの能力により停滞を生んだ3人の関係性。居心地はいいものの、どこかの作品から引用すれば本物じゃない。
大切なものを手に入れるのって対価が必要です。腹の中を割って話すという試練ですよね要は。それを乗り越えるからこそ人と人との結びつきは強くなって、いずれ親友に昇華すると思うのです。恋人なんかもそうですね。分からないから言わないといけない。今の関係性を壊してしまう可能性や不安などを乗り越えて大切な存在になっていくのだと思います。
思えば私も今仲良くしている友人は、腹の中を曝け出した人しかいません。例えば恋のライバルだったりした友人A、互いに将来について語り合った友人Bなど。言わば試練を乗り越えたから仲良くできたんだなーと思います。「いつまでも友達出来ねえな」と内心思っていましたが、当たり前でした。
そんな試練をすっ飛ばしてしまった3人の微妙なズレというのは作中でも描かれていました。特にサプライズパーティーの企画なんでそうでしょうか。顕著なのは秋君がダントツですが、人との距離感がうまく掴めない3人なのです。
ふれるの暴走によって初めて腹の中から話せた3人。今回の長かった停滞を経て真の意味で親友になれました。結末は想像していたそのままでしたが、やっぱ王道展開は悪くないですね。楽だけど、楽してたら相応のものしか手に入らないですから。それを学んだ3人が互いの道で成功して再会してくれることを願っています。
個人的に刺さったワンシーン

これは皆さんの共通認識かもしれません。ふれる。の中で圧倒的に素晴らしかったシーンがありました。秋君がふれる無しで初めて人と分かり合えたことに感動しているシーンです。樹里ちゃんとメッセージをしながら、ふれるを介さずに互いに同じことを思えたこと。ここまでくる過程と星空の描写も相まって、君の名はのような壮大さを感じました。
たまたま同じことを考えていたこと。これだけなのに、物語の中ではトップレベルに盛り上がるシーンです。これはふれる。という作品だからこその味わいなのではないでしょうか。このワンシーンを見ただけで「見に来てよかったな」と思えました。
切ない片思いに悩む秋君の始まりでもある訳で、運命かもと勘繰ってしまう所は凄くわかりみが深い……。一人で勝手に舞い上がっちゃうとこ。分かるよ秋君。うん。そういうのって1%も伝わらないことですから、これから知っていけばいいのです。
終わりに

ふれる。
2024年暫定2位作品。かなり面白かったですね。自分の中で新たな気づきや学びも多かったので、私と同じように口下手な人間こそのの作品を見るべきだと思いました。
ふれる周りのところは少し雑な回収まだ気がしますが、この作品はそこじゃないと思います。これから見る方も、見終わった方も、自分の人間関係を見直すきっかけになるのではないでしょうか?
今回はここまで。ありがとうございました。
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